2009年から2年間、大学院で環境関連学を専攻するため、イギリスにやって来た私達の話 This blog is about us(U&I) coming to UK in 2009 for Environmental Study at master level for 2 years
by uk-env
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2011年 05月 04日 ( 1 )
Summer term has started
Iです。

5月に入り、夏学期が始まりました。春休みの課題もどうにか提出。いやいや辛かった…。5000wordsを2本というのは量的に初めてで、当たり前ですが3000wordsレベルとも15000wordsの修論レベルとも違うテーマ設定と構成の感覚の違いにちょっと戸惑いました。

1. 気候変動及びエネルギー政策
「"Nuclear power is essential for both reducing Japanese carbon emissions and ensuring Japanese energy security." Discuss.」

震災後、俄然ホットなトピックになってしまったのは全くの計算外。4月半ばになってようやく重い腰を上げて取り掛かりました。

まず、energy securityの概念整理。国により時代により意味の違ってくるエネルギー安全保障ですが、その内容は基本的にはavailabilityとpriceに集約できる(IEA)。これを脅かすriskについて、化石燃料のscarcity、外的撹乱、内部インフラ不足、に大別して論じ、原子力発電がこれらの観点でどうエネルギー安全保障に寄与するか議論。続けて、現在の気候変動の科学が求める排出削減量の膨大さを踏まえて、オペレーション段階ではゼロエミッションの原子力のアドバンテージをさらっとおさらい。その上で、原子力発電が包含するリスク(安全性、放射性廃棄物問題、核拡散)について述べる。

それからようやく日本の文脈に入って、エネルギー安全保障確保の観点から化石燃料依存から脱することの重要性と、一定の高いエネルギー効率に到達してしまって排出削減の限界削減費用が高いことを議論。そうした状況で2030年までに原子力発電14基新設を掲げた昨年のエネルギー基本計画に触れつつ、現状、いかに原子力がエネルギー安全保障と気候変動対策の切り札になっていたかを述べる。そうしてやっと自分の議論に。他の選択肢も含めた比較考量になるが、まず、短期的には原子力なしでは無理。長期的には、現在の投資や政策で環境を変化させられるが、仮にエネルギー保障の確保の上でも気候変動への対処としても魅力的な再生可能エネルギー中心で行くとすれば、課題克服・普及のための膨大なコスト負担が必要。他方で、原子力についても、必要な安全性レベルが上がり、政治的にも地元対策(電源三法も含め)で膨大なコストがかかることを踏まえると、拭い難いリスクを抱え、かつ再生可能エネルギーとの電源ミックスとして相性の悪い原子力に大幅な投資をすることは正当化し難い。再生可能エネルギーの課題克服に費やした方が良い。

という流れで書きましたが、う~ん、5000 wordsじゃ十分な分析はできなかったです。全体的に「浅い」仕上がりになった感が否めません。。課題設定がちょっとアンビシャス過ぎたかも、というのが反省。

2. サステナビリティのためのイノベーション
「Low carbon road transport systems in Japan: within analysing the potential for ‘next-generation’ vehicles in compact cities using the multi-layer perspective」

セオリーをケーススタディに応用することがペーパーの目的である、と口を酸っぱくして教官が言っていたこのモジュール。修士2年目にして、未だにこのスタイル、苦手意識があるんですよね、私。

元々、全く知識のなかった運輸部門、とりわけ単体対策について勉強したいとボンヤリ思っていましたが、multi-layer perspectiveをセオリーとして使うことに決めた時点で、もっと幅広い社会システムを見る必要に直面。こじつけ気味に「in compact cities」を追加。

まずはセオリーというわけで、イノベーションを「ランドスケープ(長期的にはゆっくり変化するが、誰かが変えようと思って変わるわけではない大きな環境。人口動態、政治環境、経済状況など。気候変動もここ)」「レジーム(技術のみならず、市場、規制、税制、人々のマインドセット等、各種の社会経済システムが複雑に絡み合ってできている現在の社会の仕組み)」「ニッチ(イノベーションの種になり得るが、安定的なレジームと比べて競争力がなく、レジームをreplaceするのはなかなか難しい)」の3つの層の相互作用の中で見て行くmulti-layer perspectiveについて。続けて、どうsub-optimalなレジームをdestabiliseしてニッチの発展を促進するかというTransition Managementについて。技術に関しては、単に技術のサプライの問題だけではなく、どう使われるか、需要側の対策が重要になる。イノベーションを促進するpublic interventionにおいて必要なのは、扱う範囲を特定し(政治的issue)、関係者がビジョンを共有し、向かうべき方向性をハッキリさせることであり、これを議論するための関係者のプラットフォームづくりが必要、云々。

ケーススタディとしては、環境モデル都市のひとつ横浜市を選び、運輸部門にフォーカスしつつ、策定されたアクション・プランとその策定過程について分析。自動車単体対策と街づくりの観点では、レジームの要素の複雑な絡み合いについて十分認識されているが、分析範囲の特定やビジョン策定においては政治的legitimacyが問題になるところ、策定過程で市民の十分なインボルブがなく、特にニッチ(例・日産の電気自動車)の発展促進に関しては、産学官の連携は良いが、「誰のビジョン?」が問題になる(日産のビジョン?)。ここから、multi-layer perspectiveの理論の限界として、Transition Managementで必ず直面する政治的legitimacyの問題には対応していない、というようなことを書きました。

ともあれこれで残すは修論のみ(修論の研究計画の提出は別途ありますが)。一息つく間もないですが、2年間の総まとめとして心残りのないよう、頑張りたいと思います。
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by uk-env | 2011-05-04 03:05 | 大学(Sussex)