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2009年から2年間、大学院で環境関連学を専攻するため、イギリスにやって来た私達の話 This blog is about us(U&I) coming to UK in 2009 for Environmental Study at master level for 2 years
by uk-env
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理系頭
Iです。

本格的な冬になりました。日中の最高気温が2℃くらいでしょうか。今週は「気候変動の科学」のセミナーでプレゼンがあったりで、結構忙しい毎日でした。

今学期すべてのモジュールを通じてラストになる今回のプレゼンは、気候変動の原因特定に関するもの。いわゆる懐疑派の人は、「気候変動って言ったって、自然の気候の変化かもしれないじゃないか」と言いますが、IPCCによれば、20世紀後半における全球での平均気温上昇については、90%以上の確信度で人為の温室効果ガス排出に由来すると言うことができます。方法論としては、観測結果と気候モデルの照らし合わせによることになりますが、今回のセミナーは、とりわけ「極端な気象現象」(「異常気象」に近いが、気象庁の定義する「異常気象」が30年に1回以下のかなり稀な現象であるのに対し、「極端な現象」は毎年起こるような大雨等まで含む)が焦点。

今回はグループプレゼンで、私は「特定の極端な気象現象の原因を気候変動に求めることは可能か」という部分を担当。IPCCの第4次評価報告書(第1作業部会)に同旨のFAQがあり(一言で言うなら「不可能」が答え)、プレゼン準備は楽勝かに思えたのですが、IPCCを読んでいると頭が混乱してきました。

全球での気温上昇の原因特定のロジックは、
 ・自然の放射強制力のみを勘案したモデルでは、観測された気温上昇を再現できない。
 ・人為起源の放射強制力を取り入れたモデルでは、これを再現できる。
 --->よって、観測された気温上昇は人為起源である可能性が高い。
ということになるのだと思いますが、これが、物理的・時間的に小さなスケールになると、確信度は下がります。大陸レベルより小さい・50年より短いスケールでは、原因特定にまだまだ分からない点が残っているそう。

直観的には、スケールが小さくなるとノイズ(variability)が大きくなって原因特定が難しいというのは分かる気がしますが、単に「よって、一個の極端な現象について原因を気候変動に求めることは不可能」と言ってしまって良いのでしょうか。resolutionの問題でモデルによる再現が不可能なだけで、仮にモデルが完全に近ければ、原因特定は可能?単に不確かさの程度問題?と思いましたが、IPCCによれば、意外にも、極端な現象に関する全球統計に関しては、現在のモデルはかなり正確に再現できるのだそうです。更に、個別の現象についても、例えば2003年の欧州熱波は、自然要因のみを入れたモデルより人為要因を入れたモデルの方がより観測結果に近い結果を導くというところまで言えるらしい。にも関わらず、一個の極端な現象の原因を人為要因と特定することはできない、しかし人為要因が同様の現象の発生可能性を高めると言うことはできる、という。てことは、「一個の現象」の原因特定については、モデルと観測結果を照らし合わせるという方法論自体が使えないってこと?とすれば、「一個の現象」の区切りはどこ?持続的な干ばつなどはどう判断するの?

こういうのって、理系の人には常識なのかもしれませんが、「文系頭」の私は混乱するばかりです(ちなみに、セミナー中は日本語ですら自分の疑問を説明できる自信がないくらい混乱していたので、英語でこれを質問する勇気は出なかった…)。どうしたら「理系頭」が作れるんでしょうねえ。昔、サークルの友達(全員法学部)で旅行に行った際、「マイナスイオンでリフレッシュしなきゃ!」という発言から、「マイナスイオンが発生してるってことはきっとどこかでプラスイオンも出てるに違いない。プラスイオンはどこに行くの?」という疑問が湧き、6人で激論に。理系の友達に電話して尋ねると(回答は忘れたor理解できなかった)、「文系だね…」と呆れられた記憶が。次元の違う話だし、書いててちょっと恥ずかしくなってきましたが、要するに、IPCCの報告書を理解するレベルの理系的脳みそが、私にはないんです…。

この「科学」のモジュールでは、IPCC第1作業部会報告書がバイブルな感じ。更に言えば、このコースを始めるまで、IPCCと言ってもSPM(政策決定者向け要約)以外はほとんど読んだことがなかったのですが、このコースで勉強している過程では、どちらかというとTS(技術的要約)の方を参照する機会が多いような。う~ん、ちょっとお腹いっぱいな感じになってきました。1月の試験が怖いです。
理系頭_e0195686_343847.gif

by uk-env | 2010-11-26 03:06 | 大学(Sussex)
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