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2009年から2年間、大学院で環境関連学を専攻するため、イギリスにやって来た私達の話 This blog is about us(U&I) coming to UK in 2009 for Environmental Study at master level for 2 years
by uk-env
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交渉ごっこ
Iです。イギリスメディアはウィリアム王子の結婚ネタでもちきりですが、それはさておき。

カンクンCOP16まで2週間を切りました。うちのコースのセミナーでここ2週間やっていたのが、COPの交渉ごっこ。10人中、途上国出身者が1人(彼はUNFCCC交渉経験者)しかおらず、留学生は私の他はドイツ人が2人、残りはイギリス人という構成で、先進国perspectiveで現在の交渉を見るとこうなるのだな、ということをつくづく痛感することになりました。

というのも、皆が米国の2050年までに83%削減(2005年比)の目標を手放しで絶賛、インド役を引き受けたイギリス人・ドイツ人が早々にlegally-bindingの削減(!)をコミットしてしまい、私が引き受けた中国は、先進国のみならずインドからも責められるはめに。EUは、京都議定書を闇に葬りconsumptionベースの新議定書を導入すべきとの主張。。。現実離れ感に、まあ、素人で交渉しようっていうのに無理があるなあとは思いつつも、ついrealityと過去の経緯にガンジガラメになってしまいがちな立場からは、結局EUの人間でも市民レベル(それでも、修士の気候変動コースをやる程度に関心がある人達)ではこの辺が素直な感覚なんだろうということを知る意味では興味深かったです。

それから、悲しいことには、本当に今の日本のプレゼンスなんか虫けらなんだな、と。「ごっこ」自体は素人の遊びなので単純に楽しめますが、交渉ゲームの準備として課されたリーディングの論文等(書き手はすべて欧米人)がなかなかショックで。日本への言及があるのは、鳩山前総理が25%削減に野心レベルを上げたというコペンハーゲン前の歴史と、排出量マーケットで将来的に協力の余地があるという文脈のみ。少なくとも2年前は、日本が先頭切って主張してたはず…と思われる「途上国・米国を包含する一つの議定書」案はEUが推した、「非附属書Ⅰ国の卒業条項」はアメリカが望んだ、という分析もあり。確かに彼らもそれを欲したかもしれないけど、少なくともこのバリ・ロードマップの交渉で矢面に立ってきたのは日本じゃん!というような話でも、一切Japanの名前はなく、そうか、それほどに国際社会(少なくとも議場の外)には日本の声は届いていなかったか、ということを痛感します。交渉ごっこにおいても、資金や技術移転の話で、豪州、カナダ、ロシアは言及されても、日本を思い出す人はいないって…。京都COP3の交渉記録(by日本代表団員)など読んでいると、日米欧が「三極」なんて書かれ方をしていますが、そんな時代はもはや過去ですね(当時から勘違いだったかもしれないけど)。

渡英後、いろんな場面で感じた、「おや、実は日本って尊敬されてるかも」っていうソフト面でのポジティブな意外感は、過去の経済的栄光を徐々に食い潰しているだけかもね、というシニカルな納得に変わりつつある今日この頃です。

<補足>現実離れした交渉ごっこが少々frustratingだったため、セミナー後、ある南米の小途上国の交渉官であったクラスメートと帰り道に議論。印象的だったのは、彼がG77のコーディネーションはもう最悪、と嘆いていたことでした。
・基本的に一年ごとに持ち回りの議長国が議事進行することになっているが、そのキャパシティのない国が多いので、特定の有力者(例えば、フィリピンの…)が仕切ることになる。
・もっとも時間がかかるのが、議題ごと(緩和、適応、技術移転…)のコーディネーションのスケジューリング(スケジューリングに時間を食って中身を議論できず、次回の繰越ミーティングの日程調整が必要になる悪循環)。
・利害が対立するので毎回喧嘩。下手すると、賛成できない国にコーディネーションの時間を敢えて間違えて伝え、不在中に有力国だけでG77ポジションを決めてしまう。
G77の内部対立は、私が見ていた頃は(交渉戦略上)先進国側には好ましいことと捉えていましたが、コペンハーゲンで起こったこと-transparencyに対する小国の不満爆発=Accordの採択失敗-は、G77の内部の問題も影響していたのかなということを感じました。
by uk-env | 2010-11-17 06:02 | 大学(Sussex)
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