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2009年から2年間、大学院で環境関連学を専攻するため、イギリスにやって来た私達の話 This blog is about us(U&I) coming to UK in 2009 for Environmental Study at master level for 2 years
by uk-env
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My new blog 新しいブログ
Uです:

日本に帰ってきた後もブログを続けようと思い、自分のページを作りましたのでお知らせします。留学以降のことはこちらをご覧ください。

Just because I want to continue my blogging even after my return to Japan, my blog page is now open. Please have a look at this!
# by uk-env | 2011-11-27 09:14
論文の日本語訳
Uです:

以前投稿した国際的な炭素の価格付けに関する修士論文について、このたび日本語訳を作りました。こちらから閲覧・ダウンロードできます。
# by uk-env | 2011-11-23 11:43 | 大学(York Uni)
Dissertation on Global Carbon Pricing
Uです:

帰国から2ヶ月、ようやく論文が出来上がりましたので、投稿します。
Since my returning to Japan 2 month ago, I have finally submitted my thesis to UK - here you are.

国際的な炭素の価格付けの見込み
-炭素税、炭素の社会的費用、及び使途に関する国際的な予備調査-

【概要】

現在、法的拘束力を持つ温室効果ガスの削減目標に関する国際合意が難しい一方、発展途上国において適応の必要性が訴えられる状況においては、気候変動に脆弱な国々のための資金を調達するために国際に導入しうる、炭素税に注目が集まってしかるべきである。このため、炭素税、炭素の社会的費用及び使途についてのオンライン調査を実施した。この結果、1000人以上の参加者からの回答によると:
(1)70%以上が①人為による気候変動が継続的に起こっていること、②政治的意思決定のための十分な科学的確実性、③気候変動を解決するためのグローバルな国際協力の必要性に同意し、約60%が④気候変動のための国際的な補償の必要性を受け入れた。
(2)地球温暖化対策の手段として、再生可能エネルギー政策は最も人気があり、原子力政策と地球工学はそれほどでもない。また、経済的手法の中では、産業に対する炭素税が最も好ましいとされ、これに排出量取引制度、個人に対する炭素税が続く。
(3)炭素税は世界中で許容されうる。CO2トン当たり50米ドル以下であれば、一定の税率に関するコンセンサスを国内で得られる可能性がある。最も高い税率で合意する可能性があるのは、税収を国内のCO2排出削減のために用いる場合であり、続いて途上国の温暖化による被害者のために支出する場合で、最後に温暖化以外の社会問題に使われる場合である。一方、炭素税についての国際的な合意の可能性はほとんどない。
(4)炭素の社会的費用の期待値はCO2トン当たり100米ドルを超え、上記の炭素税に対する支払意思額よりはるかに高かった。
(5)いくつかの要因は炭素税に対する支払意思額に積極的に影響を及ぼす可能性がある一方、他の要因は支払意思額に負の効果を持つ。

これらの調査結果に基づき、炭素税についてもっともらしい設計と実現可能な戦略を提案する。
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Likelihood of Global Carbon Pricing
-International pilot study on carbon tax, social cost of carbon and revenue use-

[Abstract]

In the current situations of the difficulty in agreeing on the legally-binding greenhouse gasses reduction target while the necessity for adaptation in developing nations, a carbon tax should be under the spotlight to implement globally to raise funds for vulnerable countries to climate change. Hence I conducted an online survey on carbon tax, social cost of carbon and revenue use. According to the answers from more than 1000 respondents:
(1)Over 70% agree with ongoing anthropogenic climate change, enough scientific certainty for political decision, and global cooperation for resolving climate change while almost 60% accept the necessity of the international compensation for climate change.
(2)Renewable energy policy is the most popular while nuclear and geo-engineering policies are not that much. A carbon tax on industry is the most preferable MBIs followed by an emission trading scheme and a carbon tax on individuals.
(3)A carbon tax may be acceptable around the world, and consensus on a certain tax rate of no more than 50US$/t-CO2 can be made domestically. However, there is little chance in the agreement on an international carbon tax.
(4)The expected value of Social Cost of Carbon was more than 100US$/t-CO2 and far more than the above willingness to pay answers.
(5)Several factors may positively influence on WTP for a carbon tax while the other factors have negative effects.
I will propose a plausible design and feasible strategy for a carbon tax based on those findings.

※ 全文は、ココからダウンロードできます。 The full version is downloadable from here
# by uk-env | 2011-10-03 08:21 | 大学(York Uni)
Dissertation on climate change committee
Iです。

帰国後まもなく2か月。ようやく、修論を提出しました。〆切が9月12日(郵送の場合は9日までに投函)で、8月末あたりから、どう頑張っても間に合わない、ペナルティ覚悟でlate submissionとしようと思っていたところ、大学寮のインターネットに不具合があったせいで全学で〆切が1週間延長に。おかげでどうにか間に合いました。

仕事をしながら論文を書く辛さは想像以上で、物理的に時間がないことももちろんですが、何より、アカデミック環境を離れて新しい仕事が目の前にある状況において、心が離れていくのをコントロールするのが大変でした。帰国後にアサインされたポストは気候変動とはほとんど関係がなかったせいもあり…。帰国してから修論を書こうと思っていらっしゃる留学生の皆さん、論文は、帰国前にできるだけ片付けてきた方が良いですよ、ホントに。

ともかく。提出した修論のタイトルですが、「Can an independent advisory agency contribute to successful climate policy?: evaluating the achievements and limitations of the UK's Committee on Climate Change」というもの。2008年の気候変動法に基づき設置された英国の気候変動委員会について分析していきました。

使ったセオリーは、time inconsistencyとcredibility hypothesis。一言で言うと、複数の相対立する政策目標を持つ政府は、その時々によって政策を変更する(過去に約束した政策を反故にする)インセンティブを持っており、政策の信頼性を高める必要のある政府は自ら、解決策として独立機関に政策決定権の一部を委任する、という仮説です。

この点、一番の論点になるのは「どこまで権限を委任するか」ということ。気候変動委員会に関しても、気候変動法の国会審議やその前段階のコンサルテーションにおいて大きな議論となったのがココでした。time inconsistencyの問題を語る時よく例に出されるのが中央銀行の利子率決定権で、イギリスでも労働党政権誕生直後の1998年に、イングランド銀行法によって中央銀行の金融政策委員会に利子率の決定権が委任されています。気候変動委員会をそのアナロジーととらえるなら、同委員会に政策決定権(例えば税率決定権)を与えるのも一案。しかし、そうした強力な権限は、気候変動委員会には付与されませんでした。気候変動は、金融政策と比べて政策の社会経済への影響の現れ方が複雑で、specificな政策決定権をunelected bodyに譲与することになじまない、というのが一つの理由です。あくまで同委員会が行うのは政府への「アドバイス」。最終的に政策を決める権限と責任は政府にあります。(ちなみに、日本的文脈だと、「あー、保守派が抵抗したんだろうな」とか思っちゃいますが、気候変動法に関しては、英国保守党は極めて進歩的。そもそも、気候変動法をやろうとキャンペーン張ったのが現首相デイビッド・キャメロンですから。。)

それでも、リサーチの過程でインタビューした関係者17人のうちのほとんどが、同委員会に付与された権限については極めてポジティブな評価を行っていました(ま、委員や事務局本人も含むのですけど)。気候変動法は、委員会のアドバイスに対して政府がきちんと応答しなければならない仕組みを担保しており、アドバイスを受け入れない場合には合理的な理由を説明しなければならないこととしています。政府の拒否権を極めて小さくしているところは、強力な政策決定権自体を委員会に与えないこととのバランスで、とても重要だと思います。

それでもあくまでアドバイザリ機関に過ぎない気候変動委員会にとって、政府にyesと言わせるためにはcredibilityが最も重要な問題。その維持のためには独立性と政治的中立性が極めて重要と思われます。

●独立性
 政府へのアドバイザリ機関として、政府から独立していることはとても大事。委員会が出す各種レポートは、かなり最後の段階まで政府関係者が読むことはないそうで(ただし、個人的な印象としては、それは建前だなと感じましたが。たぶん、あるレベルでは内々に情報交換されている)、政府からレポートの内容にケチを付けることはできないそうです。もちろん、政府側の分析と委員会の分析に相違がある場合は、徹底的に議論して何が違うのか追究するらしいですが。とにかく、委員会側のindependentであることへの誇りは予想以上でした。
 ただし、資金の面で政府に全面的に依存していることは、将来的にはアキレス腱になるかもしれません。委員会は多くの分析を外部コンサル等に発注しており、彼らの研究の質の維持のためには資金問題は死活的に重要。委員会の廃止には法改正が必要でも、政府は資金を絞ることで実質的に委員会をkillできます。英国ではbudget deficitの拡大への対処が急務で、日本では考えられないくらいのラディカルなspending cutが進む中、将来的には、資金問題が委員会の実質的な存亡を決定してしまうかもしれません。ただし、現在のところ、気候変動委員会のbudgetは、減らされているとは言え、他の政府系機関と比べると全然マシなようです。まだまだ政府の中での気候変動委員会への期待は大きいということ(とりわけ自民党との連立政権において)。

●政治的中立性
 私にとって一番おもしろかったのがココ。前述のように委員会に政策決定権はないので、理論上、政府は委員会のアドバイスを拒否できます。委員会はあくまで専門家の立場からアドバイスを行うため、political feasibilityは考慮する必要がない(むしろすべきでない)わけですが、あまりに政治的に実現不可能なアドバイスを行ったら、政府はこれを拒否せざるを得ない。そうすれば、アドバイスを行った委員会側のcredibilityにも?マークがつきます。
 この点、DECC(エネルギー気候変動省)とDfT(交通省)の課長の言ってることの微妙なニュアンスの違いが興味深かったです。DECCの課長は、委員会がもし純粋にサイエンスだけに基づくアドバイスをしたらそれは問題だけど、彼らは経済学にも強いので、しっかり経済的分析に基づくアドバイスをすれば、政治的実現可能性という意味での政府との乖離はあまり大きくならないだろう、というスタンス。そして、委員会は絶対にpoliticiseされるべきでない、そうすれば彼らのcredibilityは落ちてしまう、と言ってました。
 他方、DfTの課長は、credibilityのため、委員会はもっと現実的なアドバイスをするべき、とりわけ技術的実現可能性、文化的実現可能性についての分析が足りていない、という感じ。
 おそらく両者の言っていることどちらも正しいのだと思います。政治に左右されない専門家の意見を政策に反映させる(これこそ委員会設置の目的)という意味において、彼らが政治化されないことは重要だけど、政府が受け入れ可能な、地に足のついたプラクティカルなアドバイスを、あくまで政治的に中立な分析に基づいて行うことが必要。そのバランスはとても難しいと思います。この点、気候変動委員会のこれまでのパフォーマンスについては、多くのインタビュイーが好意的に評価。ココはたぶん、委員長や事務局長らの個人的な能力によるところが大きいように思われ、そうした超一流の人的資源を集められたことは、委員会設置当時(スターンレビュー後コペンハーゲン前という、一番気候変動が熱かった時代)の時代的背景も影響しているんだなと思いました。


研究を終えての感想ですが、2006-2008年頃の英国が、どれだけ気候変動に真面目に取り組もうとしていたかを改めて思い知らされます。2050年目標に法的拘束力を持たせたことの実質的意義は曖昧ながら、2050年に向けてきちんとパスを描き、確実にそれを達成しようとしていることが、炭素バジェットの創設とそれを実質的に決定づけるアドバイザリ機能をもった気候変動委員会の設置に現れていると思います。

当時、気候変動を仕事にしていた私は、あの頃の日本では、ようやく当時の安倍総理が2050年半減目標を打ち出したものの、その絵を描く際に、現在と2050年の排出量のグラフでパスをつなげて描くことが許されなかったことを苦々しく思い出さざるを得ません。あくまで短期的にはセクター別に積み上げる:長期的な削減目標との間には断絶がある、とされていました。政治的実現可能性という意味ではそこが落とし所だったわけですが、素人目にもどう考えてもおかしい理屈。やはり、政策のcredibility担保のためには、政治的実現可能性を考慮しなくてよい外部専門家に一定のpowerをdelegateした方が良いのでしょうか…

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さて、修論も提出し、これで2年間のイギリス留学に完全に幕を下ろすことができました。学んだことを活かせるか否かはこれからの自分次第!頑張っていきたいと思います。
# by uk-env | 2011-09-20 01:18 | 大学(Sussex)
留学の終わりと新生活 The end of UK eco study and the beginning of new life in Tokyo
Uです:

7月24日に東京に戻ってきました。これで2年間の留学生活も完了です。最後に、イギリスで2年間環境を学んだ上で思うことを述べて、今後の抱負とさせていただこうと思います。
I was back to Tokyo on 24 July when was the end of my 2-year study abroad. This is my final article and to describe how I feel after UK study.

1.【留学して思う今後の日本の環境対策の課題 Challenges in Japanese environmental policy】

① 今後、特に対策を強化していく必要があると感じた分野 Policy areas where strengthening policy is needed

・海洋環境保全(海洋生態系の保全) Marine environment ・・・ まずはホットスポットを中心に我が国周辺の海洋生態系の状況を把握し、沿岸のみならず遠洋についても海洋保護区などの保護管理政策を導入することを検討。

・持続可能な消費 Sustainable consumption ・・・ 海外からの森林資源や漁業資源の輸入等に伴う枯渇・環境破壊を防止する対策として、現地における汚染者負担やPES(環境保全活動に対する支払い)の仕組み構築を支援(外部不経済の内部化)。

・生態系の経済学 Economics of biodiversity ・・・ 我が国の生態系サービスの価値を明らかにし、それが失われた場合の逸失利益を示す。

・国民レベルのカーボンフットプリント Nation-level carbon footprint ・・・ 製品のカーボンフットプリントにとどまらず、我が国全体のフットプリントを示し、最終的には地域別(市町村別)や一人当たりのカーボンフットプリントベースのCO2排出量を積算・公表し、低炭素サービス・商品への志向を促す。

・国際環境法 International environmental law ・・・ 気候変動問題の国際訴訟・紛争リスク(途上国から先進国への補償請求、排出差し止め)、WTOと環境条約などの国際環境法の整理、

② 今後の国レベルで環境行政を進めるに当たっての改善が期待される点 Points to improve in national level environmental policy

・環境「調査研究」省としての将来に渡る科学的・経済的な環境状況の徹底的な調査・把握と公表・世論の醸成を行う機能への注力(温暖化影響、生物多様性、循環型社会など)
Scientific research and investigation on the present and future environment

・廃棄物政策等あるゆる政策立案に当たっての経済影響評価を行うと同時に、環境政策以外の政策立案に当たっての環境経済評価を行う仕組みを構築する
Economic analysis for environmental policy making and environmental economic analysis for the other policy making.

・海外先行政策研究情報のアップデートを随時行う
Update of the information on advanced environmental policies oversea

・政策提案・ロビー活動を行うNGOsやシンクタンク、環境活動団体の活性化、プロフェッショナルな研究をする大学関係者等の更なる連携を測ること
Promotion for the proposal and lobbying by think tank and E-NGOs as well as further collaboration with professionals such as academic researchers

・組織的には、エネルギー政策・都市政策・農林漁業政策・経済産業政策のエキスパートの必要性、省内環境エコノミストの育成
For institution, there is the need of experts in energy policy, urban policy, agriculture and economy and environmental economists.

・個々の職員にあっては、法的・経済的・科学的な観点からの総合判断・意思決定能力を養うこと
For individuals, to acquire overall judgement and decision making skills from legal, economic and scientific view points.

・無用な業務の削減と政策的業務への集中投下、ブラックベリー・iフォンなどITの活用と徹底的なペーパーレス、自宅勤務等のフレキシブルな職場、超短期休暇の取得や計画的な業務遂行などのワークライフバランスの確保
Secure work life balance - avoiding unnecessary tasks and focusing manpower on policy making, making paperless through IT such as blackberry and i-phone, achieving flexible work style including "home work", allowing long term holidays and working on the basis of a work plan.

2. 【自分自身のライフワーク My lifework】

① 持続可能(自給自足)な環境調和型生活を老後の暮らしの中心に
Establish the society where a silver's life is with sustainability and environmental harmonization

② 環境被害が金銭被害として、広く賠償される世の中に
Establish the society where environmental victims can get compensation from causing people.

③ 政策の立案・フォローアップに際して環境コスト・ベネフィットを実施して説明責任を果たされる世の中に
Establish the society where environmental accountability is fulfilled through environmental cost-benefit at the policy making and review stage.

3. 【留学後も続ける必要がある勉強 Studies which I might want to continue after this study】

・マクロ経済学(Macro Economics)、国際経済学(International Economics), 政治経済学(Political Economy)、一般応用均衡分析などモデリング(General Equilibrium model)、国際関係論(International relations)、意思決定論 (Decision making)、国際法 (International law)
・Plus, 英語(English), 中国語(Chinese)

最後に、2年間を通じて環境に携わる人がいるこの世界は以外にも狭いものと感じましたので、世界を股に駆けて環境の仕事がしたい場合、留学は大変貴重な経験となると思います。
Finally, I realised that this world is not that big as we may assume especially in the environmental field. So if you like environmental work with people around the world, study abroad is definitely one of the promising options.

私は私で、日本の環境行政機関で炭素税など環境税制の担当として、政策を進めていきます。
I have got responsible for and promoted environmental taxation especially carbon tax.

では、頑張ってください。OK then, good luck!
# by uk-env | 2011-07-31 16:55 | 環境(Eco)